さまざまな頭痛の種類と治療方法
頭痛の診察では、どのタイプの頭痛か を考えながら問診をします
問診と、脳のMRIによる検査を行い危険な頭痛ではないかを確かめます。
血液検査にて炎症やホルモン異常などの体の状態のチェックも行います。
薬による治療を安全に行うために、事前のコンディションを調べておきます。
頭痛のタイプ、原因、その方の生活スタイルを考えた対処法を考えます。
突発性の頭痛
もっとも注意が必要で、重要な頭痛です。
‘突然’ ‘ハンマーで殴られたような’ ‘激しい痛み’ と表現されます。
この場合には脳の中に出血を起こした可能性を考え、まずくも膜下出血、脳出血を疑う事から始まります。
多くの場合、‘嘔吐’を伴います。
脳の血管にできた瘤が裂けて脳に出血を起こした可能性があります。
脳の検査でMRI・MRAを撮る理由は、この瘤がないことを確かめることが大きな目的です。
様子をみることはせず救急車を呼び救急病院を受診することが必要です。
緊張型頭痛
頻度の多い、いわゆる普通の頭痛です。
緊張とは、筋肉の張りを意味します。
問診や検査の結果、頭痛の原因が見つからないことからこの診断に向かいます。
(はっきりした原因が見つからないことを積み上げていく「除外診断」 という方法です)。
典型的には、タ方から夜にかけて多く、休みである週末に近づくほど痛くなる傾向があります。
生活習慣病のひとつの症状と考えた方が理解しやすいでしょう。
痛みそのものへの対応より、頭痛の起こる原因を考えないと解決には至りません。
さまざまな複合要因の結果で起こる痛みであるため、頭痛が全くなくなることは困難です。
不眠症、うつ病などの体調不良との関連にも注意が必要です。
緊張性頭痛の治療
痛みそのものは、通常、一般鎮痛薬(NSAIDs とアセトアミノフエン)で対応します。
本質的には筋肉の血流障害と筋肉の過度な緊張ですので、筋弛緩薬、血流改善薬を併用することもあります。
すっきりすぐになくなることがないのが筋緊張型頭痛です。
痛みは対症療法でコントロールしつつ、睡眠や生活習慣などの改善をはかりながら少しずつ頭痛の起こりにくくなる状況を作っていきます。
片頭痛
非常に激しい痛みであるとともに、上手く薬をコントロールできれば、痛みをゼロに近づける可能性があります。
突然血管が収縮した後に急激に拡張することによって、血管の周囲の神経が刺激されて痛みを引き起こします。
成人では緊張型頭痛を合併した混合型になることが多いの事実です。
突然始まり、30分から1時間で痛みのピークに達します。
20~30%は、片頭痛が起こる前に前兆を感じ、頭痛の始まるのがわかるといわれています。
キラキラと何かが見える、目が充血する、涙が出てくる、頚のあたりがゾワゾワするなど様々な前兆があります。
前兆は5分から1時間程度で消え、そのあと頭痛の症状が現れてきます。
閃輝暗点(せんきあんてん)という、視野の中にギザギザした稲妻のような光や、視野の一部が黒くなる症状です。
閃輝は最初小さく、徐々に大きくなります。次に暗点が現れ、その後に頭痛がはじまります。
痛み方は片側だったり両側だったりいろいろです。
吐き気や嘔吐・眠気をともなうこともあります。
光や音、匂いに敏感になる場合もあります。
症状の持続時間は4~72時間程度で、症状が消えると普段と変わりなく過ごせます。
突然の血管の収縮が「前兆」であり、その時に内服すると、急激な拡張が抑えられ痛みに至らずにすみます。
この原理からしても、内服するタイミングが非常に大切です。
薬の知識、飲み方を十分に理解し、ご自分で薬の飲み分けが出来ることを目指します。
発作時のトリプタン製剤と予防薬の組み合わせが治療の基本です。
トリプタン導入前の脳MRIと、頭痛の状況を知るために「頭痛ダイアリー」を作ることが必要です。
「前兆」の時の治療薬の代表は「トリプタン製剤」です。
痛くなる前兆の段階で飲み、その後の「本番の頭痛」を抑える効果があります。
製品例:イミグラン、マクサルト、レルパックス、ゾーミッグ、アマージ これらを使い分けます。
その後の痛みの時には「鎮痛剤」を飲みます。
頻度が多い方には「予防薬」を日常から内服します。
慢性片頭痛
片頭痛が起こる頻度が増えて、片頭痛とは違うさまざまなタイプの頭痛も起こるようになった状態です。
慢性片頭痛の診断基準は、
片頭痛や緊張型頭痛のような頭痛が月に15日以上生じている状態
そのうち8回以上が片頭痛の特徴を備えた頭痛である
となります。
慢性片頭痛の発症原因の約半分程度は、
長期間、頻回に鎮痛剤を服用することで起こる 薬物乱用頭痛 が関わっているとされています。
鎮痛剤を長期間使用していると、脳にある痛みの調節機能自体が低下してしまい、かえって痛みに過敏になって悪循環を起こしやすくなることがわかっています。
薬物乱用頭痛
以下のような方は薬物乱用性頭痛の可能性があります。
・頭痛が月15日以上ある
・頭痛薬を月に10回以上飲んでいる
・起床時から頭痛がある
・頭痛薬が効かなくなってきた
・ひどい頭痛を経験して、それからは予防的に市販薬を飲むようになった
使用している頭痛薬が複数の成分を含んでいる場合で、カフェインが含まれていることで薬物乱用頭痛になる可能性が高いといわれています。
治療の基本は、すべての鎮痛薬を中止することから始まります。
痛みが心配な方には、頭痛予防薬や、乱用頭痛の原因にならない薬剤を処方します。
1~2週間で次第に頭痛が緩和してきたら、その頭痛に応じた治療を開始します。
慢性的な頭痛がある方は薬物乱用頭痛になるリスクが高く、発症すると悪循環を起こして頭痛が悪化してしまいます。また、いったん治まっても再発しやすい傾向があります。
これは医師の指導の下でf治療を受けることが最良の改善策です。
思い当たるようならば、早めにご相談下さい。
群発頭痛
非常に激しい痛みです。典型的には数年に1回の群発期の間、毎日規則的に、数分から長くて3時間の激痛が、片目を中心に、必ず片側にのみ起こります。
何年かに一度、一定期間に集中して連日のように激しい頭痛が起こります。
頭痛が起こる期間を群発期と呼び、半年から2年に1回程度群発期になります。
夜間や明け方に起こり、「目がえぐられるよう」「キリで刺されるよう」と表現される激しい痛みを起こします。
頭痛の持続時間は15分から3時間程度です。
痛みを起こすのは片側の目の奥で、じっとしていられないほどの痛みのこともあります。
痛み以外にも涙・目の充血・瞳孔縮小、鼻詰まり・鼻水、額などの汗、耳閉感などを伴う場合があります。
働き盛りの男性の発症が多いのも特徴です。
群発期にアルコールを摂取すると数時間以内に頭痛を起こすとされています。
狭心症の治療薬のニトログリセリン、気圧の急激な変化なども頭痛を起こすきっかけになるとされています。
はっきりとした原因はわかっていません。
自律神経症状をコントロールしている視床下部の異常や、目の奥にある内頸動脈という太い血管の周囲を守る海綿静脈洞の異常な腫れなどが関わっていると考えられています。
ホルモンバランス、体内時計、遺伝子、水痘ウイルスによる帯状疱疹などの関与も指摘されています。
発作時の治療
トリプタン系薬剤で効果が得られるケースが多くなっています。
スマトリプタン(イミグラン)の点鼻薬が有効です。
在宅自己注射は極めて有効な手段です。自宅で自分で注射するため、注射器の使い方について、しっかりと指導を受けていただく必要があります。
群発頭痛のような激しい頭痛は、深刻な脳疾患によって起こることもあります。
群発頭痛がある場合、脳疾患による頭痛を見過ごしてしまいやすい傾向があります。
専門医を受診して他に疾患がないかをしっかり確認する必要があります。
激しい頭痛があったら我慢せず、ご相談ください。
その他の頭痛
後頭神経痛
初回の問診のみでほぼ診断がつきます。椎骨動脈解離と痛み方が似ていて、脳のMRIによる脳血管の検査は必須です。帯状庖疹との見分けも大切です。
高血圧による頭痛
緊張型頭痛に似た鈍痛が持続します。血圧コントロールのみで頭痛は消失します。
甲状腺疾患による頭痛
女性の頭痛では比較的高い頻度で見つかります。
一般的な健康診断では甲状腺ホルモンの測定が行われないため、まずは疑うことが大切です。
頭痛以外にも様々な異常につながるため、早期に適切な治療を行うことが大切です。
不眠症や睡眠時無呼吸症候群(SAS)による頭痛
朝の頭痛があった場合、まず睡眠による影響を疑います。
脳の圧力が朝方に増す特徴のある脳腫瘍も鑑別しなければなりません。
硬膜動静脈痩による頭痛
心拍と一致した耳鳴りや、目の腫れなどを伴います。MRIによる脳血管の検査を行った上で、脳のカテーテル検査で診断をつけます。
可逆性脳血管収縮症候群(RCVS):
雷が落ちたような、突然の激しい頭痛が特徴です。排便のいきみ、入浴・シャワー、救急車を呼びたくなる痛さ、があれば、まず疑います。1か月前後でおさまりますが、その間に脳梗塞やくも膜下出血を起こすことがあり、入院が必要となることがあります。
ジムでのトレーニング後、性交時などの頭痛
一次性頭痛に分類されます。脳血管の収縮・拡張により引き起こされる頭痛です。
脳MRIで血管の障害を否定することが、まず第一に必要です。
緑内障発作
眼圧が高いことが原因で頭痛が起きることもあります。急性の緑内障の場合には目の症状を伴う激しい頭痛が起こることがあります。高齢で目の症状を伴う頭痛の場合には可能性の一つとして考えます。
副鼻腔炎(蓄膿症)による頭痛
典型的には額(おでこ)や目の下(頬)に生じる持続する重い痛みです。アレルギー性鼻炎や花粉症の時期にひどくなる傾向があります。脳MRIで副鼻腔の炎症がはっきりと診断できます。